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2008.05.05

佐伯胖「認知科学の方法」

佐伯胖「認知科学の方法」東京大学出版会, 2007年.

1980年代に出された認知科学選書の新装版、コレクション認知科学の第1巻。このシリーズは全部読もうと思っている。

本書は、著者が自身のメタ理論に到達するまでのドラマとしても読むことができ、分野を問わず、院生や若い研究者がメタ理論とは何かを知るのに最適である。もちろん、著者が到達した地点は立ち位置の一つにすぎず、研究者がそれぞれ探究していくものである。論文にいつも明確に書くかどうかは別の問題として、自らの立ち位置と、その根っこに無自覚なのが一番いけない。

つくづく思ったのは、社会科学の各分野はメタ理論のレベルでは非常に密接につながっているということである。それぞれの分野は、同じ土壌に生えた草木のようなものである。合理主義も生態学主義も情報処理アプローチも、経営学の根本にもしっかり流れている。

経営学について言えば、メタ理論に常に自覚的で、メタ理論に挑戦する研究をする姿勢を持つことが大切なのはまったく同じだが、メタ理論そのものを経営学や組織論の枠内で作ろうとしないほうがよいと私は考えている。これには異論がすごくあるだろうが、時代や現象に常に寄り添って経営や組織に関わる諸問題を解決しようとする特性があることから、妙に学問として成立させようとしてメタ理論とは言えないものをメタ理論と呼んでしまうおそれがあると思うからだ。メタ理論は社会科学で広く共有するものととらえて、小さく仕切ってしまわないほうがよい。

学生の論文や投稿論文などを読んでいると、明らかに多くの分野で言われているようなことを、経営学や組織論の文献の中では言われていないので(それも本当ではないことが多いが)理論的新規性があるのだと主張する人を少なからず見かける。異分野の文献までレビューするのはつらいかもしれないが、現実に密着した問題を扱う学問であるからこそ、それを他の分野よりもやらなくてはならない

理論的貢献を狭い学問分野の枠中でしか考えない人が増えると、その学問分野の将来性は危うくなると思う。反対に、自分の学問分野の存在意義なぞ考える前に、その根っこを広い視野でとらえ、ひたすらおもしろい研究を目指していれば、気がつかないうちにその分野から土壌全体に影響を及ぼす研究が出てくることだろう。

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