友野典男「行動経済学」
友野典男「行動経済学」光文社新書, 2006年
経済学部の学部生は是非一読を。
学部の時は心理学専攻だった私は、経済学の基礎を勉強し始める時、え、ええー、人間の行動についてこんな仮定をしていいのかいな、と違和感を感じることが多々あったのを思い出す。
経済学の枠組みの中で、心理学や認知科学、大脳生理学の研究成果を取りこんで行こうとしているのが行動経済学である。まだ、個別の関数の修正の段階で、経済学の理論体系を大きく変える段階にはなっていないようだが、当然の来るべきトレンドだと思う。
詳しい内容は本書を読んで欲しいが、自分のためのメモをいくつか残しておく。
・リスクが中高程度のときは人間は利得に対してははリスク回避的、損失に対してはリスク追求的になり、リスクが低いときは利得に対してはリスク追求的、損失に対してはリスク回避になるという実験結果。
私の所属する大学院は、環境問題に関するリスクマネジメントの研究が盛んなところだが、この結果は非常に役に立つのではないだろうか。
・合理的意志決定では成り立たない協力ゲームが現実に生じているいくつもの理由。
-他人が全体へ貢献しているのを見ると自分も貢献する傾向。ただし、平均額よりやや少ない目の貢献をする。(だから、繰り返しゲームでは徐々に協力関係が衰退する現象が見られる。)
-他人が自分を信頼しているのを感じると自分もそれに応えようとする傾向。フェアの感覚や、感情面も含めた復讐への恐れ。
-自分の直接の利得に結びつかなくても裏切り者には処罰をおこなう。
・処罰も合理的(経済人的)には説明できない効果を生むことがある。遅刻に罰金を科したら遅刻が増加したばかりか、罰金廃止後も遅刻は高水準のままであった。
これは、外発的動機づけが内発的動機づけを損なうという心理学では有名な理論である。
・利得への期待(決定効用)と、利得を得たことによる経験効用では、脳の違う場所が活性化する。また、損失を感じる場所も異なる。
この問題に限らず、概念的には一直線にあるものが、脳の違う場所によって処理されているということはたくさんあり、これが心理的なさまざまな現象のかなり部分を説明していくことになるだろう。まだまだ未解明な分野である。
・感情によって全体的に合理的な選択を促す場合がある。相手の感情が損なわれるのを予期して、短期的に合理的な選択をしないなど。
・ソマティック・マーカー仮説。意思決定するときには、身体感覚が重要な役割を果たす。
人間が生きていくために合理的な感情的な反応は、生理面と文化面の進化的な淘汰によって生まれてきた面が強いだろう。もちろん、現代の状況に合わないものも多く、感情が合理的な選択を阻害する場合もたくさんあるが。
身体的な感覚については、これが何なのか非常に知りたいところである。暗黙知と言ってしまってよいものなのか、もっと幅広いものなのか。いずれにせよ、身体的な感覚や感情と頭で考えることのキャッチボールが、良い意志決定を生むのだろう。
・人間は、裏切り者を正確に見分ける能力がある。
北海道大学の山岸先生らの研究成果だが、顔を見ただけでかなりの確率で言い当てられるんだそうである。これはおもしろい!

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